オンラインカジノの相次ぐ日本撤退にある背景とは?

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北欧発オンラインカジノ大手レオベガスが、この8月末をもって日本市場から撤退となりました。レオベガスは「モバイルカジノの王様」とも呼ばれ、数多くの受賞歴も誇るオンラインカジノの一つだっただけに、この撤退のニュースは、オンラインカジノのプレイヤーたちの間でもそれなりの驚きをもって受け入れられました。

ここ数年、日本市場には多くのオンラインカジノが上陸し、サービスをローンチしましたが、逆に日本市場から撤退すること自体も、例えば昨年7月に日本向けサイトを閉鎖したCASINO-Xなど、実は珍しいことではありません。

しかしながら今年は、このレオベガスのケースを含め、オンラインカジノの日本市場撤退が相次いでいます。Onlinecasinojapan.comなどのオンラインカジノのレビューサイトで、おすすめカジノとして紹介されていた大手カジノもいくつか含まれており、この相次ぐ撤退には何か理由があるのではと気になるところです。

2022年に撤退となったオンラインカジノは?

まず実際に2022年に日本から撤退した主なオンラインカジノを見てみたいと思いますが、代表的なところでは以下のサイトがあります。

  • レオベガス(8月末に日本撤退)
  • ロイヤルパンダ(8月末に日本撤退)
  • ピクセルベット(8月末に日本撤退)
  • スロッティベガス(7月末に閉鎖)
  • ワイルズカジノ(3月に日本撤退)
  • ホイールズカジノ(3月に日本撤退)

ところで本題に入る前に「撤退」の意味を明確にしておきたいと思います。実は日本で展開しているオンラインカジノのほとんどは、海外に拠点を置く会社によって運営されています。レオベガスはもちろん、日本でも知名度のあるベラジョンカジノなどもその例に漏れず、日本だけでなく多くの国・地域で展開し、多言語によるサイトをもっています。

それらが日本市場から「撤退」した場合、カジノ自体が閉鎖されていない限り、日本からのアクセスが拒否される(「あなたの地域からのアクセスはできません」といった内容のメッセージが表示される)一方で、他の市場では別の言語によってこれまで通り運営されているのが普通です。

上記のカジノの中では、スロッティベガスは日本からの撤退という訳ではなくカジノ自体の運営が終了したことがわかります(サイト自体を閉鎖した旨のメッセージが表示されるため)が、他のカジノの場合は、単純に日本からの「撤退」となっています。

日本からの撤退の背景とは?

日本からの「撤退」はつまり、これらのカジノが日本市場での運営に見切りをつけたということに他なりません。ではその背景にあるものは何なのでしょうか?

まず最も考えやすい理由は、十分な顧客(ユーザー)確保ができなかったということでしょう。各カジノのユーザー数は一般に公開されていないため、それらを比較、分析することは難しいですが、多くのカジノが日本でのローンチから比較的短時間で撤退していることを考えると、想定していたユーザー数が獲得できていないことが大きな理由の一つであることは考えられます。

またグループカジノが日本を撤退したことにより、合わせて日本撤退になることもあります。今年の例でいうと、ロイヤルパンダやピクセルベットは、レオベガスの姉妹カジノとして知られていますが、これらの撤退はレオベガスの動きに合わせて行われたものと考えられます。

ところで、新たな市場へとビジネスを展開するのは、かなりの投資となります。特に日本のように独自性の高い言語や文化を持った市場の場合、その難易度は一気に上がると言えるでしょう。例えばまず日本のユーザーを獲得するために、サイトやカスタマーサポートのローカライゼーションを行う必要があります。ここで妥協してしまうとその後の成功の機会が失われることになるので、どのカジノもこの部分はそれなりの時間と費用をかけて来ることは容易に想像がつきます。一方で、こういった投資とは裏腹に、期待通りのユーザーが獲得できなかった場合、特に決断の早い海外の会社の場合、早々に見切りをつけて、より大きなチャンスを見込める他の地域での展開を優先する、というのは考えられるシナリオでしょう。

日本市場は難しいのか?

現在のグローバル化されたビジネスの分野において、日本市場が時に「ガラパゴス」と呼ばれたりもするように、他の地域では成功しているグローバル展開のビジネスが、日本市場ではなかなか成功を収めることができないといった話は、珍しいものではありません。

例えば支払い方法だけを見ても、日本円という独自の通貨があることに加えて、いくつもの日本独自の電子決済サービスが浸透しています。またカスタマーサービスの質も、世界最高クラスのものを求められる中で、そういったニーズにどこまで対応していくのか、日本上陸にあたっては、そういった決断が求められることになります。その点でいえば、レオベガスのように日本円での決済や日本人のカスタマーサービスにも対応し、オンラインカジノとしては非常に高い質のサービスを提供していたサイトが撤退を決めたことは、ユーザーにとってみると衝撃的だったと言えるのではないでしょうか?

けれどこういったソフト面での要求の高さ以外にも、カジノ側にとって日本での運営継続を思いとどまらせたのは、法律的な部分もあったように思えます。もちろんユーザー獲得はサービスの展開において最も基本となる部分ではありますが、法律はまた別次元の話になります。というのは、そもそも日本では、ギャンブルはあくまでも違法とされており、日本を拠点とする会社がカジノを運営することも、それらをプレイすることも違法となります。

一方で日本で展開しているオンラインカジノは、上でも書いた通りあくまでもの海外企業による運営であり、それに日本からアクセスするという、いわばグレーゾーンをつく使い方になっているのが現状です。ランドカジノに関してはIR法に基づく具体的な議論が進む一方で、オンラインカジノについては、今年5月にはコロナ給付金の振込ミスによって発生したスキャンダルで、一層風当たりが強くなるなど、オンラインカジノが明確に合法となっている国や地域に比べると、運営を継続することのリスクは、はるかに高いと言えるでしょう。

という訳で、今年の相次ぐオンラインカジノの日本撤退は、これらの要素を含めた複合的な理由によるものと言えそうですが、オンラインカジノは今後も、日本市場のもつ可能性とこういった法律的・マーケットの独自性からくるリスクとの間での判断が求められることになりそうです。

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