仮想通貨EOSはシステムが「中央集権的」で「金権的」であるだけでなく、科学的な証明プロセスが欠如していて道徳に反している-
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イーサリアムとカルダノの共同創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏は、コインテレグラフ日本版のインタビューに答えて、仮想通貨EOSはシステム面、科学面そして倫理面で大きな問題を抱えていると痛烈に批判。野放しにされれば「業界存続に関わる脅威」と懸念した。イーサリアムを離れたホスキンソン氏はしばしばイーサリアムの共同開発者ヴィタリック・ブテリン氏とSNS上で激しい議論を交わす。しかしホスキンソン氏は、EOSの問題は全く次元の違う話だと強調。「同じ分野での競争者と認めない」と話した。
最近の仮想通貨EOSに対する批判
EOSは、スマートコントラクトを利用して分散型アプリ(dApp)を作れるブロックチェーン。イーサリアムより取引時間が早く、手数料(ガス)がかからないことが特徴だ。過去24時間でユーザー数が300を超えている分散型アプリは、イーサリアム上で12個あるのに対してEOS上では7個存在している。
またEOSは、DPoS(Delegated Proof of Stake)を採用。EOSトークンの保有量に応じて承認者(スーパーノード)を21名選出し、ブロックチェーンの承認を行う。
最近、この21名のスーパーノードによる承認システムに対して批判が強まっている。イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は、スーパーノードの影響力が大きく「年に1%の利益を享受する」など金権的だと指摘。「コインを使った投票ガバナンスが失敗する例の一つだ」と厳しく批判した。
またEOSとステーブルコインのテザー(USDT)の関係を疑問視する声も出ている。仮想通貨取引所ビットフィネックスを批判し続けてきた著名ツイッターアカウント@Bitfinexedによると、イオスとテザーの創始者は同一人物で、テザーの米ドル準備金残高を疑う声が高まる中、イオスを発行して切り抜けたという。
EOSに対するホスキンソン氏の見解
「業界存続に関わる脅威」
今回コインテレグラフ日本版のインタビューに答えたホスキンソン氏は、ブテリン氏が指摘したEOSの金権的な仕組みに同意。次のように述べた。
「私がEOSに対して考える最大の問題は、グリード(強欲)と不誠実の産物であるところだ。彼らは40億ドル(約4500億円)の資金調達しておいて、コミュニティーに対して受託者責任は全くないと断言した。まさになんでもありの世界だよ。」
その上でホスキンソン氏は、具体的にEOSの3つの問題点を指摘した。
1. システム面 寡占
先述の通り、EOSのブロックチェーンは、取引時間が早く、手数料がかからないが特徴だ。しかし、ホスキンソン氏はそのために払う代償は大きいと指摘する。
「そのために何を犠牲にしているのか?21の代表が支配する中央集権的な仕組みだ。(EOSトークン)90%の供給量が1%のアカウントによって支配されているレポートもある。まさに寡占だ。半永久的な支配権を持つ金権的なシステムだ」
2. 科学面 証明システムの欠如
数学者であるホスキンソン氏が率いるカルダノ開発チームやイーサリアムの開発者は、学会での論文発表などを通して自分たちの主張は常に他の科学者の目に絶えず晒されているという。一方EOSは、独立した証明プロセスを経ず、科学的な観点、開発者的な観点からはありえない主張をするという。
「彼らが1秒に50万~100万回の取引と言う時、常識的に考えて一体何を意味するのか大きな懸念を抱いている。あなたが取引する際のデータサイズが1キロバイトだとしよう。その場合500メガバイトもしくは1ギガバイトの話をしていることになる。1秒ごとにだ(中略)1秒に1ギガバイトだって?しかも世界中で?また、EOSはたまにサブセカンド(1秒未満の)ブロックタイムについても話す。0.3秒 0.4秒でいけると主張する。”世界中にデータを送るのに0.3秒かかる”…分配システムの観点から意味が分からないよ」
ホスキンソン氏は、第3社による科学的な証明プロセスが欠如している結果、こうした無謀な主張がまかり通ってしまっていると話す。
3. 倫理面 カルダノを盗人と名指し
仮想通貨EOSの開発企業Block.OneのCTOダニエル・ラリマー氏が、今年1月にブログでカルダノ独自のコンセンサスアルゴリズムであるウロボロスがEOSのDPoSのコピーだと発言した。カルダノの開発者がEOSからアイデアを盗んだという主張だ。これに対してホスキンソン氏は、事実無根だ反論。証拠もなく自身の科学者が盗人と名指しされたことに対して憤りをあらわにした。
「EOSのコミュニティーの特色が現れている。彼らが何者なのかもね。数十億ドル資金調達して説明責任はないと言い張り、証明する手段なしに主張を続け、挙げ句の果てに競争相手に対して証拠なしに盗作だと非難する。不愉快で卑しい行為だ。(中略)ラリマー氏は(主張を)取り下げるべきだ。そして我々の科学者に対して正式に謝罪をするべきだ。不道徳で間違っていて嘘だ」
ホスキンソン氏は、とりわけ倫理面での問題に大きな懸念を示した。「業界存続を脅かす脅威」になるとみているからだ。ホスキンソン氏は、「数十億ドルのベンチャーキャピタリストに近づいて言われた通りにシステムを作るEOS」と違ってカルダノは、モンゴルや南アフリカなど「問題を抱えている人々の所に行く」戦略を取っていると付け加えた。
「ヴィタリックは違う」
ホスキンソン氏は、ヴィタリック・ブテリン氏と共同でイーサリアムを立ち上げたが、2014年に去った。それ以降、ツイッターなどSNSではブテリン氏と白熱した議論を展開するケースがしばしばある。しかしホスキンソン氏は、ブテリン氏とは「意見の相違」があるだけで「彼の良いプロダクトを作りたいという情熱を疑ったことはない」と強調。EOSとは全く次元が違う話だと主張した。
「ヴィタリックと我々の科学者は、PoSのデザインで確かに意見の相違がある。ヴィタリックとは公の場で議論をしてきた。ただヴィタリックの良いプロダクトを作りたいという情熱を疑ったことがない。確かに彼に対してはイライラすることはある。例えばレディットやツイッターで議論する必要があるのか?とかね。我々はそうでなくても同じ学会に参加する。学会の方が議論の場としては好ましい傾向がある。雑音より良い情報が得られる確率が高い。しかしまあこれは変えようがない。」
「仕事への情熱」ではなく「金儲け」が目立つこの世界。「我々のエコシステムの文化だということを認め、終わらせなければいけない…」ホスキンソン氏は、EOSコミュニティーからの批判覚悟でこの話を切り出しだ。顧客が損失を抱え証券法などの違反行為が見られた時、規制対象になるのは一つのベンチャーでだけではない。悪影響は業界全体に広がるのだ。
カルダノとEOSの対立は、異なる仮想通貨プロジェクト間でのイデオロギーの違いなのか?それとも、誰もが客観的に指摘できる仮想通貨エコシステムの本質的な問題なのだろうか?何でもありの世界をどこまで許容するのか、どこまでが譲れないのか…。そうした線引きが確立されずに手探りで進み続ける仮想通貨業界。学問・科学の世界で長年蓄積された証明手法がそうした状況に一石を投じる可能性はあるのかもしれない。
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