初心者用 艦これ 秋雲 改二 ステータス レベル 装備


秋雲SummerDays     秋雲の夏


    


秋雲サマーデイズ    秋雲の夏


秋雲は鎮守府の寮のポスト付近をうろついていた

そして何かに気付き、柱の陰に隠れた

自転車が止まる音がし、ポストのフタがガチャガチャと鳴り

しばらくした後、自転車の走り去る音がした


秋雲はポストを開けて何かを取り出ししばらく眺めた後、部屋に戻った

秋雲は自分のベッドに横になり先ほどポストから取り出したものを

眺めながら、考えあぐねていた


「や、やあ、いい天気だねえ・・さすがに唐突過ぎるか・・」

「い、いつもありがとう・・いやいや・・おかしいおかしい・・」

「暑いのに大変だねー、お疲れ様ー・・これかな?これが自然だな・・うん・・」

そして秋雲は眺めていたものをバインダーに挟むと部屋を出てどこかに出かけた


それから秋雲は毎日時間さえあればさりげなくポスト付近を通り過ぎたり

付近に座り込んで時間を潰したりを繰り返した

これは最近急に始めたことではなく

ここしばらくの秋雲のライフワークとなっていた


そんなある日いつもの場所でキキキーッと自転車の止まる音がした

あわてて飛び出そうとした秋雲であったが一旦考え直し一呼吸置いた

(ポストの前で立ってるって言うのもねェ・・不自然か・・いやそうでもないか・・)

秋雲は物陰から顔を出しポストの様子を伺おうとしたところ

見慣れた誰かと目が合った


「なんだ、明石さんか・・」

明石「なんだってご挨拶ね、人でも待ってた?」

「いやいや、待ってないですよ、だれも待ってないですよ」

明石「ふーん、・・そう、」

「えーと・・えーと・・明石さんこそこんな所で・・・?」


図星を指されあわてた秋雲だが、必死に偶然居合わせた風を装った

明石は要らなくなった自転車を譲り受けたので、修理して鎮守府内で試運転の最中との事だった


表に出て明石の自転車を見せられ二、三、言葉を交わし分かれた後

元居た場所に戻ろうとした時、再び自転車の止まる音がした

「また明石さんか・・」と秋雲がポストの横を通り過ぎる際そちらに目をやると


明石ではない違う誰かと目が合った

秋雲は焦った、一瞬気が付かないフリをして通り過ぎようかと思ったが

思い切り目が合い過ぎた、しかもかなりの至近距離である


秋雲「あ、あ、ありがとう・・いつもありがとう・・」


あまりに咄嗟の出来事で脳内予行演習が実を結ばず、

言わない予定の方のセリフを必死で口にする秋雲であった


「あ、いや、すいません、ポストに勝手に入れてしまって・・」


20才前後の青年だろうか?

手には宅配ピザのチラシが握られている


秋雲「え?あ?・・いいのいいの!いつも楽しみにしてるのよ!・・いつも楽しみに・・」


青年「・・チラシをですか?・・」


青年はピザ屋の店員ではなくチラシ配りのアルバイトをしているようだった


秋雲「・・あ・、うん・・そう、私ピザが大好きなの、新しいチラシはまだかなー・・なんてね・・」


青年「ありがとうございます、じゃあこれ・・」


青年は少し照れくさそうに秋雲にチラシを手渡すと再び自転車で走り去ってしまった

「あ、うん、うん、またねー」などと意味不明なことを言いながら青年の背中を見送る秋雲であったが

秋雲が本当に好きなのは当然宅配ピザではなく、チラシを配る青年のほうであった


(じゃあこれ・・とか言われてモー、ハァーまいっちゃうなー)

部屋に戻り受け取ったチラシを丁寧にクリアファイルに挟むと

秋雲はベットに寝転がり今起きたやり取りを何度も脳内で繰り返しては

ニヤついたり、悶えたりを繰り返した

(ありがとうございます・・だってさーー・・どーしよ、もーー・・)

ギュッと布団に抱きついて見ては足をバタバタさせたりもした

(もー秋雲ちゃん、どーするよー知り合いになっちゃったよー)


それからしばらく秋雲は、時間がある時はポストの様子を見に行き

部屋にいる時はベットで身悶え転げまわる日々を繰り返した


(あー、今日も暑いねー・・ジュースでも飲む?・・ちょっと唐突過ぎるかなあ・・)

(いやージュース買い過ぎちゃってさー、一本どう?・・ワザとらしいかなあ・・)

(いや今さー販売機に100円入れたらジュース2本出ちゃってさー・・さすがに受け取りづらいか・・)


秋雲は今度会った時、青年にさりげなくジュースを渡したいと思っていたが

なかなか良い言葉が浮かばない様であった


(いやいや、待てよ・・会っていきなりジュースどう?、もリアリティーが無いかな・・)

(やあ、こないだはどうもー♪、今日も暑いねー、良かったらどうぞー♪)

(そんな感じかな・・まあまあ、じゃないかな・・)


そして秋雲はいつもの様にポストの様子を見に行きふと考えた

(待てよ・・姿が見えてからジュースを買いに行くとその間に居なくなってしまうかもね・・)

(かといって、手に持って待ち続けたらぬるくなっちゃうしな・・)

(ま、また会ったねー、ちょっと待ってて・・→販売機までダッシュ→今販売機に100円入れたら2本・・

 違う違う・・、暑いからジュースでもどう?・・こんな感じかなあ でも販売機はちょっと遠いしなあ・・)


(でも大体同じくらいの時間に来るよね・・前回来たのは3時位かなあ・・)


前回受け取ったチラシのファイルに自分で貼り付けた付箋の日時を確認し

それから秋雲は毎日の様に2時50分にポスト近くの階段にスタンバイした

郵便物は殆どの場合、鎮守府に直接届けられるので寮の裏にある集合ポストは置物と化しており

ポスト前の出入り口や階段などは人通りが少なく誰かに出くわす事は殆ど無かった


頻繁にポスト付近で秋雲はスタンバっていたが例の彼は中々姿を現さなかった

しかし秋雲はジュースを渡す脳内予行演習と前回のやり取りを思い出しては

ニヤついたりで暇や退屈を感じる瞬間は全くと言っていいほど無かった

来る日も来るも秋雲は飽きもせずジュースを持って待ち続けた


「朧ージュース飲むー?」

秋雲は毎日ジュースを買っていた

冷蔵庫で冷やし再利用すればいいような気もするが

秋雲にとってはしくじる事が許されない大一番の舞台である

肝心のその瞬間がやってきた時に何か不手際が起こる位なら

多少ジュース代はかさんでもという事でその度ジュースを買ってはいたが

さすがに2本は飲めないのと部屋や冷蔵庫に溜め込むと誰かに不審がられるのではないかと

口の堅そうな朧に半ば半強制で渡すことにしていた

ある程度溜まったら夕雲型にプレゼントして高感度を上げる作戦も考えたが

いらない突っ込みが飛んできそうなので却下にした


朧「うん、悪いね、ありがとう」

朧は最初余りにしょっちゅうジュースを渡されるので多少不思議に思っっていたが

戸惑う朧を見かねた明石からその事情を聞かされていた

あの日自転車で通り過ぎる風を装っていた明石だが実は事の一部始終を見ていたのだ

朧には口止めも兼ねて秋雲のジュースの秘密を話すことにした

見方によっては悪趣味だが明石は興味本位も手伝って

ポストと秋雲の様子を今でも時折見に行っていた


そして、余り人に会わないと言っても頻繁に同じ場所でジュースを持ち座り込む秋雲は

複数の人に見られており駆逐艦の間では秋雲2:50と呼ばれ多少噂になってはいたが

恐らく人気の無いところで物語の構想を練ったり、創作活動でもしているのだろうと

余りその行動自体は気にされてはいなかった


季節は変わり始め、鎮守府の花火大会も終わり、次第に秋へと近づいていった

秋に近づいたと言っても朝晩が多少涼しくなり始めただけであり

日中はまだまだ日差しが強く夏と言う言葉以外表しようがない様子ではあった


秋雲は鎮守府の花火大会に青年を誘いたいと考えていたが彼はまだ現れなかった

そして秋雲は時間さえ許せばポスト付近の階段で妄想と演習を繰り返した


そんなある日誰かが寮の裏門に来たような気配を秋雲は感じた

以前とは少し違ってキキキーの代りにチリンチリンと鈴の音がした

非常に小さな音であったが秋雲の耳には聞こえていた


秋雲は胸をドキドキさせながらポストのほうの様子を伺った

そこにはあの青年がいた

チラシ配りのアルバイトならやめたのかもとか別の地域に変わったのかもと

普通なら考えそうなところだが秋雲は次に会えた時の事で頭がいっぱいで

そんな事は一度たりとも考えた事が無かった

彼がまた来る、それが秋雲の中では当然の事になっており

来る日も来る日も待ち続けていた

私が居ない時に来ているかもしれないと任務が終わると毎日ポストの投函物を確認もした


そして彼が再びやって来た


秋雲は転びそうになりながら階段から降りた

自分では全く自覚が無かったが緊張しているのだろうか?

立ち上がると足がふらついた

しかし彼がポストの前に立っていたので秋雲はあわてて表へ飛び出した


秋雲の気配に気付いたかの様に青年は後ろを振り返ると

そこには両手にジュースを握り締めた秋雲がいた


秋雲「や、やあ、また会ったねェ、・・」

秋雲が胸の横で突き出すようにジュースを2本鷲掴みにしているため

青年の目が自然とそちらに向いた


秋雲「あ、あ暑いねェー夏だねー、ハハ・・」

青年「そうですね・・」

秋雲「あーそうだ、久しぶりだねー最近見なかったねー、ハハ・・」

青年「色々あってアルバイトお休みしてたんです・・」

秋雲「へ、ヘぇー大変だったねー、少し休憩とかどう?休憩とか・・ハハハ・・」

青年「・・そうですね・・」


秋雲に促され青年は少し間をおいてポスト付近のコンクリートの段差に腰を下ろした

ここはポストの設置されている壁と建物への出入り口の上に掛かる天井が日を遮って

日陰になっていた


秋雲「暑いからね、無理すると体の悪いからね、ホ、ホラー、水分補給ーー・・ね、」

青年「有難う御座います、でも大丈夫ですから」

秋雲「え?スポーツドリンクダメ?コーヒーがいい?お茶がいい?すぐ買ってくるよ!すぐ・・」

青年「ちょっと今は飲めないので、お気持ちだけで十分ですから・・」

秋雲「・・え、遠慮しないで、すぐ買ってくるから、すぐ・・」


それから青年は体調を崩して休んでいた事などを話し、

販売機に走ろうとする秋雲を引き止めた

飲み物の好みを外してしまったとあわてた秋雲だったが

(お医者さんに止められてるのかなあ・・)などと考え直し

秋雲も青年の近くに腰をおろす事にした


秋雲と青年は色々な話をした

青年は言葉数が少なかったがこのアルバイトが初めてのアルバイトである事や

現在は祖母の家からアルバイトに通っている事などを話した

秋雲はその青年が何かを話す度、うんうんと大げさに相槌を打ち

「そうだよねー、たいへんだよねー」と同調する言葉を並べた

秋雲は同調する言葉を並べる度に青年と親しくなっていくような気がして

嬉しくて嬉しくて調子を合わせる言葉が流れるように口をついて出た

秋雲も他愛も無い日常の出来事などを話したが

それがさも愉快な話であるかのように満面の笑みで似たり寄ったりの話を繰り返した


それから秋雲は鎮守府の花火大会の話しをした

規模こそは大きくないが打ち上げた花火が海面を照らしてとても綺麗な事や

夏の夜の海風がとても心地よいことなどを語って青年のほうを見た

青年はまんざらでもない顔つきで秋雲の話を聞いていた


秋雲「えと・・あ・・花火好きかな?・・」

青年「実は本物は余り見たことが無くて・・」

秋雲「えーと・・見てみたくない?・・花火とか・・凄くきれいだよ!」


秋雲はここで花火に誘う決心を決めていた、

日が近く急に「花火行こう」よりは、「良かったら来年」ならかえって誘い易いとも思った


秋雲「・・どうかな?・・来年花火?」

青年「・・でも僕はここの人間ではないので・・」


秋雲「ダイジョブ、ダイジョブ、私ココの関係者だから入れるって・・それとも実家に帰っちゃうって事?」

青年「いえ色々と・・」

秋雲「行こうよ・・花火、来年行こうよ、ね」

秋雲「一番いい席用意するからさ、私ココの関係者だから・・ね、入れる様に頼んでみるからさ・・」


秋雲は懸命に彼との約束を取り付けようとした

口にするまでは勇気がいったが、口にした以上、秋雲ももう下がれなかった


秋雲「・・お願い・・一緒に行って下さい!、お願いします!」

初めての恋はブレーキが効かないのである、


青年「・・正直に言うと・・僕も・・行っては見たいんですけど・・」


秋雲「・・じゃあ行こう、ね、来年一緒に、ね・・」


秋雲は最早半泣きであった


青年「秋雲さん、良く聞いて下さい、もう一度言いますが僕はここの人間ではないんです」

青年「だから、来年必ず一緒に行けるとは約束出来ないんです、ですが・・」

青年「ですが、行ってみたいのも本当です、行けたらいいな、とは思います、だから」

青年「必ず行けるとは約束出来ないけれど、秋雲さんも一緒に行けたらいいな、と思っていて下さい」

秋雲「・・・」(ウマクコトワラレタカ・・・シニタイ・・)


青年「秋雲さんが来年本当に僕と一緒に花火に行きたいと思ってくれているのであれば、

    僕も気持ちは一緒です」


秋雲「え?・・」(あれ?逆告白された?告くられてね私?)


秋雲「うんうん、本当、本当、思ってる思ってる」(イエスかな?イエスかな?)

青年「じゃあ僕も行けたらいいなと楽しみにしています」

秋雲「うんうん、楽しみだねー来年の花火、行けたらいいねー」


それから青年は、時間が無いのでそろそろ行かないと、と言った様な気がした後、どこかに消えた


(もうーーーどうするよー秋雲チャン・・気持ちは一緒とか言われちゃったよおーーーー)

(まあー若い男は素直じゃないよねー私の方が年下だけど・・行こうって言えばいいのにー)

(地元に彼女がいるとか?いやいや、いたらあんな事言わないでしょー言わないよねーそんな人じゃないもんねー)

(もしや私が彼女?彼女秋雲誕生?いやいや、まだ早いかなーまだ早いよねー)

(あ、連絡先聞くの忘れた?まあまた今度でいいかー・・がっつき過ぎて嫌われてもねー)


秋雲「お!、おぼろちゃん!、今日もかわいいねー、はいジュース」

朧「え?え?なんかいい事でもあった?」

秋雲「いい事とか、やだもーおぼろちゃん、何言っちゃってんのーー」

秋雲「変な想像しないでよー、もーーーやだーーー」

朧「・・・・・」


などと言っては両の手で自分の頬をはさみ、勝手に赤くなる秋雲であった


それからの秋雲はスポーツドリンク、オレンジジュース、コーヒー、お茶、ミネラルウォーターと

複数の飲み物を持って階段に座り込むようになった

それは彼に気を使ってと言うよりも彼に良く思われたいとう秋雲の願望のなせる業であり

それを大変な手間と感じるどころか沢山のジュースと共に彼を待ち続ける時間は

今の秋雲にとって、とても幸せな充実した時間であった


(いや待てよ、花火って一年後でしょ?それまでに何もナシとは限らないしな・・)

などと考えながら押入れに仕舞い切りであった朝顔模様の浴衣に袖を通して

一年後の準備と気の早い秋雲であったが


朧「秋雲いるー?行くよー」

秋雲「ちょ、待って・・あーあーあー・・」

朧「・・どうしたの秋雲?浴衣なんて着て・・」

朧「あー、秋祭りかー」

秋雲「え?・・あ、そーそー、秋祭りね秋祭り、秋祭りに着ようかと思って・・ね・」

朧「でも任務の前に試し着は、ねェ・・もう出発するよ・・」

秋雲「うんうん、すぐ行くすぐ行く」

(そうかー秋祭りかー・・・)


(秋祭りに誘うってデートじゃん・・いやいや花火もデートか・・)

(金魚掬いして・・ヨーヨー釣りして・・いいよ、僕が持つよ秋雲サン・・

(両手がふさがってるからたこ焼き食べさせてあげる・・あーん・・とかやだもーー//)


秋雲、朧の肩をバンバンと叩く


朧「ちょっとイタイわよ、叩かないでよ・・大丈夫秋雲??」

秋雲「・・ハッ・・ゴメンゴメン、大丈夫、すぐ行くすぐ行く・・」

秋雲(秋祭りかぁ・・)

朧「・・・???」


などと幸せな未来向かって夢は膨らむ一方であった


しかし青年は秋祭りを過ぎても現れなかった


ある日いつものように秋雲がポスト近くの階段で待機していると

自転車が止まる音がしてだれかがポストに近づいてきた

結論から言うとそれは彼ではなく

秋雲から見るとかなり年配の男性であった


一瞬浮き足立った秋雲だったがいつもと様子が違うことにすぐに気が付き

チラシを手に持ちやってきたおじさんがポストに投函する様子を眺めていた


(別の業者さんかな・・)

おじさんが立ち去った後、ポストの中身を確認すると

いつものピザ屋のチラシと他数点のチラシが投函されていた


(また休んでるのかなあ・・)

しかし彼が以前休んでいた時、ポストにチラシが投函されている事は無かった


それから一週間後再び自転車の止まる音がしたがやはりこの間のおじさんであった

秋雲は少し不安になり思い切っておじさんに声を掛けて見た


秋雲「あのー、あのー・・いつもの人はー・・?」


他の配達物とは違い住人に話しかけられる事は珍しくチラシの配布でいつもの人と言う

形容は少し耳慣れない言われ方なのでおじさんは一瞬戸惑った顔をしたが

秋雲が持ってくるチラシの内容や彼の人となりなどを伝えたため

おじさんは誰のことを言っているのか心当たりがあるようだった


少し考えて「もうやめたよ」と、それだけ言いその場を立ち去ろうとしたが

当然秋雲はそれだけでは収まりがつかずもっと詳しく聞こうと必死に食い下がった


秋雲は彼がやめたと言う話を全く理解出来なかった

私に何も言わずやめるなんて絶対ありえないと秋雲は思っていた

おじさんの勘違いではないだろうか?人違いではないだろうか?

おじさんは彼ではなくきっと別のだれかの話をしているに違いないと

だって私と彼はすごくすごく親しい仲のはずで、とても大切な約束をしていて

私も彼もそれを凄く楽しみにしていたはずで・・


秋雲はもっと詳しく話が聞ける様、秋雲が知っている彼の話を

出来るだけ持ち出して彼とは非常に親しかったという事を必死にアピールした


必死に彼の話をする秋雲を見ていたおじさんは少し迷った後、

何かを決心したように一呼吸置いて静かな口調でこう言った


「彼はね、亡くなったんだよ」


秋雲「え?」


全く予想外の言葉に秋雲は体がふわふわ揺れるような感覚に襲われたが

あまりに漠然としたその話に秋雲は何の感情も抱くことが出来なかった


それからおじさんは彼のことを語り始めた

彼の実家はここから少し離れた場所にあったが

彼は元々病気を患っており長いこと療養生活を送っていた

このまま治療を続けてももう長くは生きられない事を彼と彼の両親が悟った時

病気のため彼に必要以上の制約を強制してきた彼の両親はせめて最後は

彼に人生を選ばせたいと彼の希望する生き方に出来るだけ協力しよう決めていた


そして彼が人生の最後に望んだものは自分の力でお金を稼ぐ事だった


一日の殆どをベットの上で過ごし決まった食事と決まった薬を与えられるだけの

生活の中で彼は人としての自尊心を裏付ける何かが欲しかったのかもしれない

それともただ人並みに働きながら暮らして見たかっただけなのかもしれない


チラシ配布の仕事は彼の要望にとても近い仕事で彼は大変気に入っていた

彼の住む町にはアルバイトの募集自体が少なく

彼の祖母が住む街で探してみてはということで祖母が知り合いの社長さんに

相談したことでこの仕事が決まった


彼の体内では病気が進行していたがパジャマを脱いで自転車に跨ると

彼はいたって普通の若者に見えた

事情を知って預かった社長さんも初めて彼に面会した時

この若者が話に聞いていた彼と同一人物なのかと訝しがったほどだった


それはこの新しい生活に対する期待と充実感が彼を輝かせていたのかもしれない


彼にはまだ自転車を漕ぐ程度の体力は残されていたが

初めは入れてはいけないポストなどチラシ配布の決まり事などを教えてもらい

最初は少ない枚数を狭い範囲で時間をかけて配る練習をした

当然お金にすると微々たる金額にしかならなかったが特別にそういった待遇で

働かせて貰っているので不満は無かったし、多く貰えれば当然嬉しくはあるが

金額自体は彼にとっては大きな問題ではなかった


このアルバイトを始めて数日経った時、彼の両親は彼の体を案じて彼の元を訪れたが

彼は日焼けしていてとても元気で、医者にはとっくに宣告を受けた身ではあったが

このまま持ち直して病気が快方に向かうのではないかと錯覚を起させるほどだった


そして両親は彼を失う事を恐れる余り彼の生活を制約し過ぎて来たのかもしれないと感じていた

その日の夜はまるで何の心配事も無い、いたって普通の家族のような団欒が続き

彼と彼の家族は彼がまだ小さかった頃のように笑顔が絶えない賑やかな夕食を楽しんだ


朝起きて職場に向かう朝の風景や町の景色を見ながらの配達はとても新鮮で楽しいと彼は語った


そしてそんな日がしばらく続いたある日、彼は体調を崩し一旦実家に戻り様子を見た後


最後は病院で息を引き取った


アルバイトは彼の体に悪い影響を多く与えるものではなかったが

病気の進行を食い止めるものでもなかった

只々その時が来たという感じであった


秋雲が話しかけたおじさんは実は社長さんであり普段は事務所に詰めているが

この不景気で仕事もそれほど忙しくなく新しいアルバイトも決まってないので

彼が配っていた少ない枚数と地域を時折感慨に耽りながら最近は自分で配っていた


おじさんは概要をかいつまんで彼の身の上やアルバイトをやめた時期

彼が亡くなった時期などを秋雲に伝えたが秋雲は納得出来ない様子だった


おじさんが言う彼が体調を崩した時期とは秋雲が初めて彼に話しかけた数日後の事であり

彼が再入院した時期というのは秋雲と座って話した日付けよりずっと前の話であった

そして何より彼が亡くなった時期というのは秋雲と並んで座ったあの日の日付と前後する


秋雲「またまたおじさん・・違う人じゃないの?・・」

秋雲「・・だって、会ったもん・・並んで座って話したもん・・」


「きっとそれは勘違いだよ、残念だけど彼は亡くなったんだよ」と言い残しおじさんは自転車に戻った


それでも秋雲はおじさんの話が納得出来ず

今まで通り時間が許せばポスト付近で彼を待ち続ける生活を続けた

秋雲の中ではやはりおじさんの話は勘違いか人違いであろうと言う事になってはいたが

以前のように弾んだ気持ちで待つことは少なくなり時折憂鬱な気分になる事もあった


それからそう遠くない雨の降る肌寒い日に

彼は再び現れた


気配を感じた秋雲は裏門とポストの間に彼を見つけた

視線の先に彼を見つけた秋雲は飛び上がるほど喜んだ


(ほら、やっぱり人違いじゃん、おじさんの話おかしいと思ったんだよ・・)


彼を出迎えようと沢山のジュースを抱えて飛び出した秋雲であったが

ポストの横まで来た時に、その違和感に気が付いた


雨の中傘も差さずにやってきた彼であったが髪も服も全く濡れてはいなかった

雨の中立ち続けているのに彼の体は全く濡れる事がなかった

秋雲は言葉を失った


ここで初めて秋雲は理解する


秋雲の生活から彼という存在が完全に消えて無くなると言う事を

秋雲のいるこの世界から彼の存在が未来永劫消滅すると言う事を


彼は表情を変えず何も言わなかった

彼は表情を変えなかったが、秋雲が彼が少し笑ったと感じた、次の瞬間

彼の存在が薄くなり始め、少しずつ遠ざかって行くのが分かった


秋雲は堪らず雨の中に飛び出して彼に近づこうとしたが

秋雲が近づいた分だけ彼は遠くなり存在は小さくなっていった


秋雲「ちょっと・・待ってよ!・・ねえ待ってよ・・行かないで・・」

秋雲「だって・・花火行くって・・花火行きたいって・・」

秋雲「・・言ったじゃん、楽しみにしてるって・・言ったじゃん!・・」

秋雲「・・ねえ・・行かないでよ・・待ってよ!・・」


秋雲は両手にジュースを抱えたまま彼を追いかけようとした

そして裏門の辺りまで来て、何かにつまづき転んでしまった


秋雲は飛んで行きそうになるジュースを必死に守ろうとして

幾つかのジュースを抱えたまま濡れた路面に倒れ込んだ

そして再び秋雲が顔を上げた時、彼の姿はもうすでに無く、

雨音と雨の当たる感触だけが秋雲に感じられる全てであった


秋雲「・・嘘でしょ・・酷いよ・・ねえ行かないでよ・・」

秋雲「やだよ・・やだよ・・行かないでよ・・お願いだから・・」


秋雲は濡れた路面に座り込んだまま暫くは体を動かす事が出来なかった


どの位時間が過ぎたであろうか

秋雲は倒れた瞬間、鈴の音がする何かを弾き飛ばした事を思い出した

聞き覚えのある鈴の音

秋雲は視線の先に何かを見つけ、重たい腕をそこに伸ばした


そこには以前彼が話してくれた鈴の付いたケロヨンのキーホルダーが落ちていた


彼との会話は全て覚えていたので一目見て秋雲にもすぐにそれと分かった

彼は以前家を出る時、自転車のカギの在り処が分からなくなり、

アルバイト開始の予定時間に遅れそうになったことがあり、

もしまた何処かに紛れてしまいそうになった時には

音で存在を教えてくれるのではと

祖母から貰ったケロヨンのキーホルダーに自分で鈴を付けたものだった


彼の配布のコースは毎日同じではなく、寮の前を通り過ぎるだけの時もあれば

少し離れた別の地域に出向くこともあり

その日どこを回るかは事務所に行って当日確認するシステムであった


彼の配布する数量はあまり多くなく、彼の事情を考慮した内容になっていたので

多少遅れたところで影響は少なそうではあったが

また彼も3時にあの場所に辿り着ければ

秋雲に会えるのでは、と考えていたのかもしれない


そして今日、沢山のジュースを抱え来る日も来るも待ち続ける

秋雲を見かねて姿を現したのであろうか


秋雲は力なくうなだれて雨に打たれ続けた








今日の鎮守府はいつもと違った賑わいを見せていた

行きかう人々もまた和やかで

時折弾んだ笑い声がそこらかしこから聞こえて来たりした


秋雲「おぼろーおまたせー」

朧「おー、馬子にも衣装だねー、前にも見たけどさ・・」

秋雲「どうどう?何度見ても秋雲ちゃんかわいいからねー」

朧「うんうん、かわいいと思うよ、今日の秋雲かわいいよ」

秋雲「やっぱり?よく言われんだよねー、まあ今日だけじゃなくいつも可愛いんだけどね」

朧「私はどう?」


朧は両腕を少し広げて浴衣姿でくるりと回って見せた


秋雲「うーん、女の子みたいだよ」

朧「ほめてんのそれ?」


予想と違った反応に少し憮然とした朧であったが

秋雲の元気な様子に安心もしていた


秋雲「おぼろちゃんそんな顔したらせっかくのレディーが台無しだよー」

朧「だれのせいよ、だれの、もっと素直に褒めなさい」

秋雲「うん、でもね、ほんとに、女の子みたい・・朧に女を感じる・・」

朧「・・秋雲が言うとなんかやらしい」

しかし朧も秋雲にそう言われるとまんざらでもない様子であった


それから2人は高台の中央辺りに陣取って日が落ち切るのを待っていた

時折海から吹いてくる湿った夜風が2人に心地よい肌触りを残していく

今日は鎮守府の年に一度の花火大会の日であった


朧「ちょっと早すぎたかな」

秋雲「待ってる時間が楽しいんですよおぼろさん」


そう言う秋雲を朧が横目で見ると帯飾りには鈴の付いたケロヨンが垂れ下がっていた


朧「あんたそういうの好きねー」

秋雲「わたしの彼氏、かわいいでしょ?」


秋雲がそう言いながら朧を見ると風も無いのに鈴の音が小さくチリンと鳴った


秋雲は少し俯き物思いに耽っているよう朧には見えた

が次の瞬間


秋雲「ジュース買うの忘れた!」

朧「何よ急に?」

秋雲「花より団子でしょう!、たこ焼きも買ってこようっと」

朧「だから何なのよ急に?」


秋雲「乙女はね、色々あるんですよ」


朧「ちょっと待ってよー」


秋雲が高台を小走りで降りてゆき鎮守府への通路に差し掛かった辺りで

秋雲の姿は闇に飲まれて見えなくなり


暗闇に鈴の音が二度、チリンチリンと聞こえてきた


朧「どうしたのー?あきぐもー?」


秋雲が段差につまづき転倒したのである


秋雲「あはは・・あはは・・あはは・・」

朧「ほんと、乙女は色々あるわよねー、秋雲ー」


追いついて来た朧に対し必死に照れ笑いで恥ずかしさを誤魔化す秋雲であったが

鈴をリンリン言わせながら浴衣に付いた土ぼこりを払い落とすと

浴衣の裾を両手でたくし上げ今度は大股で走り始めた


朧「ちょっとレディーはどうしたのよ、レディーは?」

秋雲「俺様についてこーい!」


朧「よーし!」


朧も秋雲に習って浴衣の裾をたくし上げ、 大きく走り出した次の瞬間

ドーーンという音と共に海も空も鎮守府も何もかもが真っ赤に染まった


朧「見てーあきぐもーはなび、はなびー」


そして緑色に染まった鎮守府への通路を、2人は全力で走り続けた




fin




「えー、おかわりいただけだろうか・・」
「あー、おさわりいただけた・・つまんない事、私が言ったみたいにするのやめてもらえます?」



「じゃあこれは?」





「うわあああああああああああああああああ」

そんな元五航戦・秋雲さんの恋のお話しでした

ほんとはこの前に「秋雲と亀」の話があったんですけど時間の都合でこちらだけ上げました



(モビルスーツみたい・・・)

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